キャッチフレーズを巡る知的財産権法上の問題2(商標権)

キャッチフレーズなどの広告宣伝に用いられる謳い文句については、著作権や不正競争が問題となり得ますが、商標権に関しても問題となります。

商標権に関しては、キャッチフレーズや標語のようなフレーズを、商標として登録できるかが問題となります。では、どうしてこのような問題が生じるのでしょうか。

商標法3条1項6号

商標は、業として商品を生産し、証明し、または譲渡する者がその商品について使用する標章か、業として役務(サービス)を提供し、または証明する者がその役務について使用する標章です(2条1項)。そのような性質上、商標は、自分の商品やサービスと、他人の商品やサービスとを区別できるものでなければなりません。このような機能を、自他商品識別機能といいます。
商標法3条1項1号ないし6号は、商標登録を受けることができない場合を定めています。つまり、以下に掲げる商標は、商標登録をうけることができません。

1号:普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
2号:慣用商標
3号:商品の産地、販売地、品質等を普通に用いられる標章のみからなる商標
4号:ありふれた氏または名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
5号:極めて簡単でかつありふれた標章のみからなる商標
6号:そのほか、需要者が何人かの業務に係る商品または役務であることを認識することができない商標

これらは、いずれも、自分の商品やサービスと他人の商品やサービスとを区別することができない商標であるという点において、共通しています。
しかし、3号~5号の商標であっても、使用された結果、需要者が誰の商品やサービスであるかを認識できるようになれば、商標登録を行うことが可能です(3条2項)。このような場合には、使用によって、自他商品識別力を取得したといえるからです。

キャッチフレーズなどの広告宣伝に用いられる文句は、その商品やサービスに限らず、一般的な商品やサービスにも汎用的に使われるものです。そうであれば、その広告宣伝文句によって、誰の商品やサービスであるかを需要者が区別することはできません。商標審査基準は、「指定商品もしくは指定役務の宣伝広告、または指定商品もしくは指定役務との直接的な関連性は弱いものの企業理念・経営方針等を表示する標章のみからなる商標について、出願商標が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等を普通に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識させる場合には、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」(商標法3条1項6号)に該当する」としています。

たとえば、「新しいタイプの居酒屋」は上記のような識別力があるとは認められず、同条項6号に該当し、商標登録が否定されています(知財高裁平成19年11月22日判決)。

ただし、商標審査基準は、「出願商標が、その商品もしくは役務の宣伝広告または企業理念・経営方針等としてのみならず、造語等としても認識できる場合には、本号に該当しないと判断する」との基準を示しています。 造語であれば、その商標により、誰の商品やサービスであるかを識別することができそうです。

なお、出願商標が、その商品又は役務の宣伝広告としてのみ認識されるか否かは、全体から生じる観念と指定商品または指定役務との関連性、指定商品または指定役務の取引の実情、商標の構成及び態様等を総合的に勘案して判断されることになります。

会社がキャッチフレーズを作る際も、造語にしたり、自社のブランド名を入れておくなど、ひとひねりした方が良いといえます。

 

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