違法コンテンツへのリンクが入った再生機器の販売が著作権法に問われたEUの事件➁

公衆伝達の概念に関する欧州司法裁判所判決➁

filmspeler事件の先決問題について、欧州司法裁判所は、次のとおり判断しました。

欧州司法裁判所の判決

1:情報社会指令3条1項における公衆伝達の概念は、次のように解釈されなければならない。すなわち、公衆伝達の概念は、本件のような、インターネット上で入手可能な著作権者により許諾なく著作権で保護された著作物を、公衆に利用可能とする、公衆が自由にアクセスできるウェブサイトに誘導するリンクを含んだ、モジュールを予めインストールした再生機器を販売することも含む。
2:情報社会指令5条1項および5項の規定は、次のように解釈されなければならない。
本件のような、再生機器上で、著作権者の許諾なく、著作物を提供する第三者のウェブサイト上のストリーミング配信によって、著作権により保護された著作物を一時的に複製する行為は、これらの規定に定める条件を満たさない。

判決に至る理由の要約

判決は、違法なコンテンツのあるウェブサイトへのリンクを含むモジュールを含む再生機器の販売が、公衆伝達権侵害に該当すると判断しています。
日本の著作権法を考えると、機器を販売する行為が公衆伝達権(日本でいえば公衆送信権に相当するが、同義とはいえません)になるというのは、大変な違和感を覚えます。

上記判決は、どのような理由で、このような判断に至っているのでしょうか。
➀まず、判決は、情報社会指令の公衆伝達を「伝達行為」と「公衆」に分解して考えます。

➁伝達行為は、著作物に対するアクセスをユーザに与えることと考えられ、行為者が、介入しなければ著作物へのアクセスを与えることはなかったと、介入時に知っていれば、その行為者も、伝達行為を行っていることになると考えられています。

➂公衆は、不特定多数人を想定しています。

➃すでに公衆伝達がおこなわれている場合、著作権者が想定していなかった新たな公衆に対して、許諾なく伝達した場合、公衆伝達に該当します。その判断にあたっては、伝達の営利性も問題となります。
判決は、本件の再生機器の販売も、これと同様であると判断しています。

欧州司法裁判所の上記判決は、従前の判決を踏襲したものといえます。ですが、これは、我が国の発想とはずいぶんかけ離れています。
欧州司法裁判所は、我が国のように、直接侵害と間接侵害ないし正犯と幇助とを特に区別することなく、我が国では間接侵害ないし幇助に含まれる行為類型をも、直接侵害と捉えていると考えられます。著作権侵害では、行為者の主観などは問題とならないはずです。そのため、欧州司法裁判所の判決は、この点で批判の対象とされているようです。

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